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デジタル機器と子ども (2)


夜間のスマートフォン使用は、若者の心の健康に害を及ぼす



●原文:Night phone use a danger for adolescent mental health(2017年5月31日、Murdoch University)
●研究論文:Mobile Phones in the Bedroom: Trajectories of Sleep Habits and Subsequent Adolescent Psychosocial Development(2017年5月)
●この論文が掲載された号は、特集「モバイル技術と子ども/若者の成長・発達」。インスタグラムの話からプライバシー、ネット上のいじめまで12本の論文を掲載。

(記事の要約です)
 マードック大学とグリフィス大学(オーストラリア)の研究グループがChild Development誌に発表した論文から、スマートフォン使用の懸念すべき影響が明らかになりました。国のリサーチ・カウンシルから助成を受けた若者研究の一環として行われたこの研究では、29の学校、合計1101人の学生(男性43%)を13歳から16歳まで3年間追跡。世界で初めて、この年代の子どもたちの夜遅い時間のスマートフォン使用が睡眠と心の健康にもたらす長期的影響を明らかにしたものです。

 結果によると、夜遅い時間帯のスマートフォン使用は、睡眠の質の低下と直接、比例しており、それが心の健康の指標それぞれの低下、ストレスに対する対応力(コーピング、coping)の低下、自尊心(セルフ・エスティーム、self-esteem)の低下、不良行為や暴力につながっていました。


 調査では、夜の何時にメッセージを送ったり受け取ったりするか、電話をするか尋ね、同時に睡眠の質も尋ねました。その他、鬱的な症状の有無、不良行為やケンカ/暴力行為に加わったかどうか、さらにストレス対応(コーピング)と自尊心についても尋ねています。

 13歳の段階で85%がスマートフォンを持ち、スマートフォンを持っている学生の3分の1が、夜、ベッドに入った後はメッセージも送っておらず、電話もしていないと答えました。ところが、3年後になると所有率は93%、ベッドに入った後にメッセージも電話もしていないと答えたのは22%にとどまりました。

 「最初は夜遅くにも比較的『健康的』な使い方をしていた若者たちの場合、その後の数年間で急に夜間の使用が増える傾向がみられた。テクノロジーと睡眠を自分でコントロールできているように見えている子どもたちでも、その後の使用を追跡して教育していくことが必要だということになる。」(グリフィス大学のメンジーズ健康研究所のKathryn Modecki博士。論文の共同著者)

 「夜遅い時間のスマートフォン使用が最初から多かった学生たちは、睡眠の状態も最初から悪い傾向にあり、スマートフォン使用が増えるに従って、睡眠状態も悪化する。」(論文の筆頭著者で、博士論文としてこの研究を担当したLynette Vernon博士)

 「特に重要なのは、睡眠状態が悪化すると、その1年後、鬱的な症状が増え、外へ向かう否定的な行動(不良行為や暴力等)が増え、自尊心とストレス対応力が下がるという相関がみられ、そのつながりはどの項目でもかなり強力でだったという点。」(Kathryn Modecki博士)

 「(スマートフォン使用を禁止するというような単純な解決策がうまくいくはずはなく、)スマートフォンのようなテクノロジーにはさまざまな利点もある。けれども、この研究結果からみると、おとなが『若者が今いる所まで行き』、こうした機器を使わない時間を一緒に決めたり、良い睡眠習慣を身につけるよう促したりすることが重要。」(Lynette Vernon博士)




(要約、解説:掛札逸美。2018年9月30日)